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思想家T氏が語る
(W杯の報道姿勢を見れば、戦時の危うさが浮き彫り)
2014.7.14
——   2014年サッカーワールドカップも、終わりましたね。日本はリーグ戦で敗退という、なんとも悔しい結果でした。
 いや、日本がトーナメントに進めないことなど、最初からほぼ分かっていたのだ。

——   そう冷めた言い方をしますが、多くの日本人や、サポーターたちは、悲嘆に暮れたのですよ。
 バカバカしい。そんな者どもは、ワールドカップなど見る資格はない。

 F1に例えれば分かるだろう。日本人なら、佐藤琢磨や、小林可夢偉を応援するのは当然だろうが、だからといって本気で彼らが優勝するなんてこれっぽっちも期待していないだろう。世界の一流ドライバーによるレースを純粋に楽しみ、またその中で健闘した日本人レーサーを讃えるのである。

——   サッカーの見方も、そうあるべしと?
 そうだ。大会は大会で楽しみ、日本がどこまで勝ち進めるかは、別の次元で受け止めることができなくては、ワールドカップを楽しむことなどできない。

 日本代表など、リーグ戦で3敗か、良くて1勝2敗というのが、冷静な予想というものなのだ。つまり、「日本が負けたら悲嘆する」という立場を取ったら、非常に分の悪いコンテンツなのは最初から分かっている。プロ野球の最下位チームだって、3回に1回は勝つのである。

——   なるほど、1勝する可能性さえあまりなかったのですから、本気で日本を応援するなら、楽しめるコンテンツであろうはずがないですね。
 だが、高い放映権を買ったテレビ局を中心に、まるでトーナメントに進めるかのように、あおりにあおった。最初から冷静な分析を伝えていれば、盛り上がりに欠けるし、視聴率も稼げない。だから、日本代表の力をわざと過大評価し、国民に虚偽の希望を与えたのだ。

——   そそそ、そんなに悪く言うほどのことですか?
 悪いに決まっているだろう。太平洋戦争のときの報道姿勢と、何ら変わらない。戦局をねじ曲げて伝え、まるで日本がアメリカに勝てるかのように、煽ったのである。客観的にはほとんどあり得ないことだが、国民は乗せられてしまった。

 これは、報道機関として、大変危険なことだ。

 はっきり言って、サッカーごときを客観的に伝えられない今のマスコミが、いざ戦争になったときに客観的な報道ができるわけがない

——   それもそうかもしれませんね。
 もうその危機は、今、すぐそこまで来ているのだ。

 「中国の戦闘機は旧式で性能が悪く、軍隊の士気は低い。それに比べて、日本の自衛隊は最新鋭で……」などと、敵の戦力を過小評価し、自国の戦力を過大評価して報道する。仮定の話ではない。こういった報道は、もうすでに行われているではないか。

 「中国は、1年以内にも攻め込んでくるかも知れない。しかし、今、自衛隊が最新鋭の部隊で中国に攻め込めば、3日もしないうちに北京を制圧できるだろう。攻め込まれる前に、攻めるのだ」などと、マスコミがやってみなさい。大半の日本人は、戦争に賛成してしまうかもしれない。

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